十川駅は「とおかわえき」と読む。駅で「そがわ駅まで一枚」というとしばらくして「とおかわえき」ですね、と。JR予土線窪川駅で乗り換えが40分弱あって、一両の汽車が走り出すとすぐに四万十川が見えてきた。土佐大正、土佐昭和というえきもあった。十川駅も、後でわかったけれど次の半家駅(はげえき)も川沿いにあるのに駅は山の斜面にある。高知県は県土の84%が森林、つまり山でこの辺りは山か川かしかないと言っても良いくらいなので駅が斜面にあるのもうなづける。このとさくろしお鉄道のキャッチフレーズは「GREEN VIEW ! GREEN WIND ! GREEN FEELING ! 全席グリーン」。
十川駅前からBROMPTONで道の駅とおわまではあっという間で、食堂でおすすめの「とおわ秋のかご膳」を相席で食べた。どれも地元の食材で栗も手長海老も芋も美味しかった。出てくるまでに時間が少々かかったけれどそれもおかずの1つということで。この道の駅はデザイナー梅原真氏が関与していて、あの「四万十川新聞バッグ」も売られていた。何も無いと嘆くのではなく、足元にあるものを宝にすれば良いという典型で、1つ買おうと思ったけれど今度はレジが結構な行列で時間がさすがにもったいなくなって諦めた。
トンネルがいくつか続くことはわかっていたのでサングラスはトンネルを過ぎてから使用。1つ目の沈下橋は半家沈下橋、次は中半家沈下橋。中半家沈下橋に行こうとして1つ手前の小道を四万十川の方へ向かってしまった。そこに岡山ナンバーの車でつりにきたひとが「ほとんど鳥取との県境から来ましたが遠いですね。あっちは9月25日に解禁が終わってしまったんですよ」といっていた。釣りをするためだけに半日以上かけてやってきたらしい。それだけの価値があるということ。ここ最近は雨が降っていないため川の水は澄んでいてそこの様子まできれいに見える。沈下橋の上から見るとゴリなどの魚もよく見えた。こういうところで川遊びができる子供たちはいいなぁ。
長生沈下橋を過ぎて道は川の東側に移り、急に道幅が狭くなる。ところがしばらくすると右膝あたりが痛みはじめ、次に両足膝が痛みはじめた。勝間沈下橋あたりからは我慢できなくなって休憩を頻繁に入れながら走らなければならなくなった。京阪神地方を走っていた時は。「痛くなったら、すぐ、輪行」して適当に帰ることができたけれど四万十は事情が違って線路は無いしバスも見かけないしタクシーも期待できず、とにかく自力で走り抜かないといけない。タイヤの空気圧を5.3BAR程度まであげていたのでBROMPTONは軽快に走行していたのに、足がたまらなく痛くなってからは重い重い。でも予感があった。何しろ走行予定距離は50キロを超える。経皮沈痛消炎薬を携行していたので時々塗りながら走行した。
勝間沈下橋で緑のBROMPTONを発見。その後別々には知ったのだけれどほぼ同じペースだったようで、次の沈下橋で休んでいると彼と一緒になった。彼のはS3Lでこちらのキャリアをうらやましがっていたけれど、こっちにすれば6速がうらやましいというと、なんと内装ギアが故障したままで外装の2速で4、5段しか使えないという。彼は健脚の持ち主だったわけで、自分にとって一番うらやましいのはその脚だった。
高瀬沈下橋、三里沈下橋、そして佐田の沈下橋を見て中村のホテルに到着した。ホテルの温泉につかって物産館の横にある「いちもん家」でおつまみセットとビールで落ち着いた。
翌朝は近くの不破神社に行くことにして、行ったからにはおみくじで運試し、なんと「一番」「大吉」でいふことなし。四万十川を渡ってトンボ王国(=四万十市トンボ自然公園)へ。ナショナルトラスト運動でトンボの生きる環境を保全するために志ある人たちがこういうところを作るんだなと関心。秋だから花盛りとはいかず、それでも小さな花をたくさんつけた草があり、近づいてみるとハチの羽音がすごかったので驚いた。目が慣れてくるとハチの多いことにさらに驚く。トンボの「接続」については初めて説明を見聞きした。トンボは種類も多く、四万十だけでも72種あり、それぞれが固有の特徴を持つ。またトンボと呼ばれるものは羽根に結節があることや縁紋があることなど、その縁紋は有害振動つまり「フラッター」を防止するためにあること等を初めて知った。お客さんは自分を入れて10人も居ただろうか?頑張ってあり続けてほしい。「あきついお」とは「とんぼ」と「うお」のことで、トンボと言えば「目」、魚と言えば「うろこ」で、「めからうろこ」にもかけた造語だそうだ。
JRの出発時間までまだある、というわけで四万十川の昨日走行した側の反対側を上って佐田の沈下橋にもう一度行った。すぐに脚が痛くなって半分後悔したけれど、桜並木が土手に続き、実に走りやすく気持ちのよい道だった。春に行きたい!
脚が痛いのと景色が良いのと、整備された休憩所があったことで休んでいたらJRの発車時刻が近づいていることに気がつき、猛然とダッシュするもまたまた猛烈に脚が痛くなって大変だった。ナントカ間に合う。JR土佐久礼駅で途中下車。大正町市場でカツオのタタキを食べるのが目的。期待が大きすぎたのかもしれないけれど、それ以上に大きかったのは一冊(さく)分のカツオの量。カツオだけ食べるわけにもいかずご飯をお代わりして、ますます食べ過ぎになってしまった。大地震と大津波が来ると言われているが、まちのあちこちに標高を示すプレートがあり、中には1854年の津波の高さが示してある柱もあった。やはり「津波てんでんこ」で自分のことだけ考えてとにかく早く高いところへ逃げる以外に方法はなさそうだ。そして土佐久礼駅から各駅停車でウトウト、のんびり帰途についた。四国四県それぞれ特徴があるけれど、四万十川のユッタリ間は他県にはなさそうで、これは1つの資源だと思った。
iPhoneのOSのアップデートによってパノラマ写真が撮影できるようになった。本体を動かしてきれいなパノラマが撮影できるというのは全くすごい発想で、さすがAppleだ。何でもできないことは無いということ。