梅原真氏の本で知ったのが黒潮町のTシャツアート展。「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です。」というキャッチフレーズに見事にキャッチされてしまった。「あれがない」「これもない」というのではなく、「いま足元にあるもの」の見方を自分から変えることが如何に大切かというお話で、学ぶべき点が多い。
土佐入野駅はJRではなく、土佐くろしお鉄道の駅で無人駅。入野海岸まではあっという間で、細かな砂の浜辺に出るとTシャツが1000枚以上「展示」されていた。協力金300円。この日は強風注意報か警報が出ていて細かい砂が容赦なく体にぶつかって痛く感じる程だったので、Tシャツも「ひらひら」というよりちぎれんばかりに揺れていた。だから立ったままの目線より、下から見上げた方がTの形に見えるし、それよりもその陰はきれいなTシャツの形をしていた。次にいく時は風がなく、晴れていて、もう少し潮が満ちている時が良い。
道の駅「ビオスおおがた」は大賑わい。アート展に来ている人以外にもサーファーが大勢来ているし、キャンプをしている人も多い。その上、車やバイクの旅行客がいっぱいで食堂は行列ができていた。お弁当を買って外のベンチで食べたけれど、強風に飛ばされないようにすることに意識が行ってしまって、何を食べたのかよくわからなかったけど、観光地にしては良心的な価格と内容だった。この道の駅には物産館が併設されていて、漂流物の展示やTシャツなどが販売されている。Tシャツアート展を紹介する本を購入した。
道の駅から中村駅までの国道56号線は上り坂も少しはあったけれど、強い向かい風の方がキツかった。中村駅で帰りの列車まで約2時間あることを確認して「日本最後の清流」四万十川へ。とにかく猛烈な向かい風。強風のためか、四万十川橋(通称 赤鉄橋)を渡ろうとすると強い草の匂いがした。左右の河原は一面緑でしかも広い。もしこんな場所が大阪の淀川や兵庫の武庫川にあったら、何百人という人がやってきて、屋台もやってきて、バーベキューをしたりして、たくさんのゴミが捨てられてしまって、あっという間に清流ではなくなってしまうのだろうが、ここは四万十。広大な河原に車10台程度と人20人程度しかいない。都会には無い、豊かさが確実にある。今回はちょっと四万十川に挨拶しただけ。四万十川にも沈下橋がたくさんある。窪川駅から予土線で十川駅辺りで下車して河口に向かい、中村駅から帰ってくれば四万十川を満喫できるサイクリングができそうだ。仁淀川では今のところこんな「ものぐさ」ルートは見つけられていないけれど、一度は四万十川でチャレンジしてみたい。大阪に住んでいて当たり前のことが、大阪に住んでいるから当たり前なだけだということがわかるような気がする。飛行機ならわずか45分。どっちもリアル。どっちも日本の町。
中村駅始発の特急南風は座席の前後も通路も決して広いとは言えず、BROMPTONを輪行するのは少々厳しい。混雑していたために座席を2つ占有しないようにと思受けれど、足元は1.2席分ほどを使ってしまう。車両の最後尾席を選ぶべきだったが、ここまで混雑するとは思わなかった。
つい最近、南海地震で想定される津波の高さが34.4mという日本の最高値で発表されたのもこの海岸がある黒潮町。土佐入野駅近くの住宅街には従来の想定のもとに作られた避難場所が車窓から見えた。今年のうちにもう一度行く。
車窓からは新緑がきれいだった。この季節に新緑となっている木々は秋には紅葉した落葉樹か、春に衣替えをする常葉樹か?何れにしても秋に負けないくらい春の山は色づく。以前住んでいた町はアパートのドアを開けると当たり前のように広がっていた光景だけど、久しぶりに春の山を見たような気がした。まさに、山笑う。「一握の砂」に「ふるさとの山に向ひて 言うことなし ふるさとの山はありがたきかな」とあるが、そう思える山がある人はいい。県の面積の84%が森林という高知県。その足元に宝があることに気がついている人たちがいるのだろう。
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